医療ミス、メディカルミステイクというのが日本でも話題になっているが、米国でも大問題である。IOMの分析は日本でも有名だが、個別のケースを紹介して、ミスの解決策を模索した本が出たそうだ。
Book Examines Epidemic of Medical Mistakes
これは、米国内科学会雑誌の連載
Quality Grand Rounds を単行本化したものらしい。
また、アーカイブ・オブ・インターナルメディスンでは、
Inappropriate Medication Prescribing for Elderly Ambulatory Care Patients という面白い調査が紹介されている。外来の7%が不適切な投薬だ、という論文で、しかも女性患者に対してこれが特に多い。
上の、Quality Grand Rounds は早速読み始めたが、胃を鷲づかみにされるような閉塞感を覚える。表面的な医療ミスのみ議論している関係者は、ぜひ読むべきだと思うし、翻訳されるべきだろう(私がやる、といわないところがずるい)。
例えば、ハリス医師(仮名)が医療事故で訴えられた実際のケースが議論されているが、病院のリスクマネジメントチームはまったく機能せず、また病院の医療の質の向上にもまったく貢献しなかった。ハリス医師は陪審員の心情や患者のアウトカムなど、彼女の過失の有無や性質とはまったく関係ない要素に翻弄される。弁護士以外は、誰も彼女を助けてくれない。
これは、自分の経験からしても、とても実感をもって理解できるケースだ(実話だし)。日本から、たくさんの方が「米国のリスクマネジメントの実際」とか、「倫理委員会の実際」とかを見学にくる。が、実際には病院の「こんなに完璧な制度ですよ」という説明会に満足して、本当にどうなっているのかには無関心である。病院のリスクマネジメントチームが本当に医療事故を減らしているのか?倫理委員会は、真の意味で倫理的なのか?私はとても懐疑的であるが、こうした実態が日本に知られることは、ほとんどない。